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いまどき(現時)物語

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「これって、ひょっとしたら恋歌と違うかなあ? 

何となく意味が深そう、
この純情可憐な乙女子が、恋に疲れて川に身を投げたという事なんだろう、きっと」と感慨深く勝手に想像している。

そして、高見沢はこの場の雰囲気がこれ以上重くならないように、
「恋に破れても世の中回ってるよ、まあ、その内に、また良い事があるからね」と言って、女性の肩を軽くポンと叩いた。
女性は高見沢の気遣いを感じ取ったのか、真珠のような涙をハラハラと落とした。
そして、ぽつりと呟くのだ。

「ああ、あやしかりける身かな」

高見沢はまた意味がよくわからない。
しかし何となく、「私って本当に不思議な運命なんだわ」と、女性が心の辛さを絞り出したのではないかと頭を巡らしている。

そんな時にだ。
「シッシッ! シッシッ! もののけ、消え失せ給え!」

背後から大声を張り上げながら近付いて来る人影がある。
振り返って見ると、黒の装束を着込んだ坊主が、念仏を唱えながら怒りの形相で、じわじわと攻め寄って来るではないか。

「何なんだよ、こんな人助けの価値ある場面で、この汚い坊さん、俺を追っ払おうとしているのかよ、

ずぶ濡れになって大和撫子を救ったのに、シッシッとは何ちゅうことだよ … バカにすな!」
高見沢は無性に腹が立って来た。

「えーい、もういいわ、時間も限界だし、出口からさっさと帰らせてもらいまっさ、
お姉さんね、後はあの貧乏坊主に任せておくから、これからはもっと図々しく強く生きないとダメだよ、

いいか、キーワードは …

明日からまた元気、イッチョ出すか! … なんだよ」


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊