いまどき(現時)物語
高見沢は無我夢中。
水の冷たさなどを感じている余裕がない。
女は気を失ってしまっているのか、川の流れのまま浮き沈みしつつ流されて来る。
高見沢は急な流れに逆らいながらも、女に何とか近付いて行った。
そして、細身の身体を渾身込めて抱きかかえる。
着物が水分を吸ってしまっている。
そのためか、随分と重い。
このままだと二人一塊りとなり、下流へと押し流されてしまいそう。
「おっと、これは、ヤッバー!」
ひょっとしたら溺死してしまうかも知れないという恐怖感が脳裏をよぎる。
高見沢は、急流に足を取られながらも満身の力を振り絞った。
まさに必死。
川床に一歩一歩足を踏ん張り、浅瀬へと歩んでいる。
「大丈夫か、しっかりしろよ!」
さらに力を絞り出し、なんとか女性を川岸の草むらへと運び上げたのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊