いまどき(現時)物語
「だけどね、ちょっと … 」
高見沢は躊躇している。
夕顔はそんな高見沢の反応を見て、さらに嬉しそうに話しを続け、念を押して来る。
「オッチャンね、アンタ、チャラチャラと適当にオモロく生きて来たんでしょ、そんなアンタの不埒(ふらち)な人生の集大成として、酒池肉林の究極ハッピー・ワールドを是非体験してみたいと思わないの … 酒と女の酒池肉林よ、お好きでしょ」
しかし高見沢は、「そやなあ … 興味はあるけどね、だけど、結構エグイんじゃないの」ともう一つ乗り切れない。
「そうお、わかったわ、高見沢さんて意外に純だったのね、見直したわ、
そうね、今までこの酒池肉林を体験した男って、よほど愉快だったのかのめり込んでしまって、この現実の世界へ戻って来た男は誰もいないわよね、
そうね、五十歳過ぎての初体験、それは幸せそうでもあったし、不幸でもあったのかもね」
夕顔は、酒池肉林の世界に踏み込んで行った男達のその後の生き様を思い出している。
「夕顔はん、そらそうなるかもな、酒と女に溺れ切ってしまう究極ハッピー体験か …
それも人生、これも人生だけど、そんなん結構疲れるんじゃないの、それに何か煩わしくて面倒臭そうだよね」
高見沢は、おのれの年齢からして、ちょっと自信がない。
「そうね、旬の過ぎた高見沢さんの場合、やっぱり酒池肉林を乗り切って行くためのチン・パワーが不足しているかもね」
夕顔は何を想像しているのか、一人納得するように頷いているのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊