いまどき(現時)物語
しかし、夕顔は落ち着いている。
「高見沢さんて、ミー・ファースト(me-first : 自己中)で、人生そこそこ長く生きて来やはったんでしょ、だけど、まだ体験出来ていない事って結構あるのと違いますか?
人間も五十歳過ぎれば、もうあまりチャンスもありませんしね、今までの人生の中で、未体験の事ってちょっと心残りですよね、そう思いませんか?
ここでは未体験な事がしっかり体験出来るのよ、そんなジョイフルな世界への入口、それがここにあるのよ、わかります?」
高見沢はさっぱりわからない。
暫くきょとんとしていたが、更に聞いてみる。
「未体験な事が体験出来るって、それって一体どうしたら良いの?」
「入口から先の回廊を渡って行くと、時と空間を越えてしまう事が出来るの、お好みの未体験世界へワープ出来るのよ」
「へえ、ワープってか、時空の移動というやつだね、そりゃあ俺だって、一様波瀾万丈かつ複雑に生きては来たけれど、まだ未体験な事って山ほどあるよなあ …
そんな世界への入口が、ここにあるの?」
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊