いまどき(現時)物語
「それでは女影武者として、今回何を学び、そして何をクリエートしたのか、そろそろ結論を出さなきゃダメだね、浮舟はどう思うの?」
高見沢は、業務遂行のケリを付けるために浮舟に問い掛けた。
「そうね、高見沢さんが求める結論とは、言い換えれば、女影武者の仕事をして、御主人様のためにどんな価値を創造したかという事でしょうか?」
「その通りだよ、何事も新たな価値創造をして、光陰矢のごとしの時の流れの中で、一つ一つの課題に決着を付けて行く事かな」
「ちょっと考えさせて下さい」
「ああ、いいよ」
グリーン・アイズの浮舟は、静かに歩みながらじっくり思いを巡らせているようだ。
その姿が紫陽花の淡色に溶け込み、誠に絵になるほど美しい。
「御主人様、結論がわかりましたわ、まずは朝霧を懲らしめてやるというのが課題でしたね、それは幸か不幸か、小夜子花が全て勝手に結論を付けてくれたわ」
「そうだね、我々何もせずに、全てが終わってしまったよなあ」
浮舟は薄紫の紫陽花に囲まれ、その幽玄の世界にきりっと姿勢を正して立っている。
そこにはもう身投げした弱さも儚さも感じさせるものは何もない。
そして浮舟は、花の向こうから高見沢に真正面に向き直って、はっきりと話して来るのだ。
「女影武者として、御主人様の高見沢さんに何を提供出来たか、
その答えは、ハラハラとエキサイティングな日々を送って頂いた事、
そして今、この平穏で至福な一時を創造出来た事ですわ」
「そうだよ、百点満点の正解だね、
現代女影武者の使命は、御主人様に胸高鳴る日々を過ごしてもらい、その結末として、至福の時を創出する、そのために働く事なんだよ」
高見沢は微笑みながら大きな拍手を送った。
浮舟は幸せ顔となり、「これからも業務に精励致します」と力強く応えて来る。
「これで浮舟の女影武者として、初仕事は合格、ここまで結論が出せたら、この複雑な現代社会を力強く生きて行けるよ」
「ありがとうございます、初めての御主人様が高見沢さんで、私、本当に感謝しています」
「そうか、こっちも本当にハラハラと楽しかったよ」
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊