いまどき(現時)物語
女性は京友禅を優雅に着こなし、姿勢正しく立っている。
高見沢は、とにかくスカッとした和服女性には実に弱い。
「えっ、こんなベッピンさん見た事ない」と勢いが一気に萎えてしまう。
しかし、この不可解な空間の謎究明のためには負けてはいられない。
「お姉さん、一体ここは何をするところなの?
その高そうな帯を解いて、アンタの絹肌の友禅扇をねっとりと開いてくれはる、
それでもって、お姉様と一緒に淫靡(いんび)な閨(ねや)の密事が味わえる、
そんな平安絵巻秘密クラブなんですか?」
高見沢は実に回りくどく、そして若干貴族風卑猥(ひわい)さを織り混ぜながら、際どい質問を一発かましてみた。
「まっ、お客さん、お品が良さそうだけど、でも、男はんはみんなスケベな事の妄想で脳がいつも破裂しそうなんどすなあ … カッワイソー …
さっ、そこの自動販売機で入場券を買っておくれやす、本日特別五割引きどすえ、たったの一万円、お話しはそれからにしまひょ」と、お姉さんは落ち着いている。
高見沢は「うーん」と唸り迷っていると、「ダンさん、いきなりでカンニンえ、だけど損はありゃしまへん」とお姉さんが迫って来る。
そして、「ここまで勧められりゃ、まっえっか」とあきらめざるを得ない。
入場券を買い、お姉さんに渡すのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊