いまどき(現時)物語
高見沢は未だ状況が明確に把握出来ず、ボーと門前で突っ立っている。
そんな時にだ。
門の奥の方から甘ったるさもある若い女性の声が飛んで来た。
「ダンさん、お越しやす!
さっさと奥の方へ、さあ、こっちへ、おいない、おいない!」
これを聞いて、高見沢はあまりの意外性に暫らく放心状態。
「なんでやねん、ここはビジネスの象徴、東京の高層ビルの最上階だぞ、
なんでこんな所で場違いの京都花街のお姉さん言葉が飛び出して来るんだよ」と、脳はひどく錯乱。
「ダンさん、そない恐い顔せんと、下の階でウロウロしてはったんでしょ、ここにあるモニターにイイ男はんでしっかり写ってはりましたエ … ほんま、可愛いボンボン」と容赦なくオチョクッて来る。
高見沢はムカッと来た。
「俺は年を重ねたダンディーだぞ、何がボンボンなんだよ、こんなアホにした勝手な呼び掛けはないだろうが」とヅカヅカと門をくぐり、声の主の方へとまっしぐらに突進。
後はとにかく、人を舐めたような京都弁に対抗出来るのは、コテコテの関西弁しかない。
しかし、声の主と正面切って向き合ってみれば、大びっくり。
えらいベッピンさんなのだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊