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いまどき(現時)物語

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「大変不幸な事ですが、だけど今となってみれば、これで良かったのではと思っています、事実このように桜木は私の元へ帰って来ましたし … 」

小夜子花は目に涙を浮かべながらも、はっきりと後を続けて来る。
「これで良いのです、だって桜木は椿子のモノではありません … 私のモノですもの」

高見沢と浮舟は、「そうなのですよね」と呟く以外にもう言葉が出て来ない。
しかし二人には、どうしても聞いておきたい事が後一つある。
今度は、浮舟が背筋を伸ばし、小夜子花に声をかける。

「奥様、旦那様がこんな事になって、まだ大変で考えられない事かと思いますが、これからどうなされて行くおつもりですか?」

小夜子花は、話題が将来への話しとなり、きりっと真正面に向き直した。
そして小声ながらもはっきりと。

「そうですね、桜木が少し蓄えを残しておいてくれていますし …
一周忌が終われば、新しい人生を歩み直しますわ」

女影武者・浮舟、さすが的を外さずに肝心なポイントをさらに突いて行く。

「へえ、そうなのですか、
失礼ですが、奥様のようにお奇麗な方だったら、どなたか助けてくれる人が現れるかも知れませんね」

小夜子花は、まるで若い浮舟から女の挑戦を受けたかのように、目一杯に反発を滲ませて来る。
そして自信ありげに呟くのだ。

「過去の辛い日々は全て終わりましたわ、桜木の供養が終わったら、私の残された将来に向かって、

そのような方と是非そうありたいものですわ、

いえ、私の人生ですもの、美しく …

その想いの方と、愛を育みたいと思っています」

誠に不気味だ。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊