いまどき(現時)物語
「本当ですね、世の中、こういう事もあるんですね、
不躾で申し訳ないのですが、奥様は、朝霧様、それにその奥様の椿子様、また同じ会社の可奈子様も御存知だったのですか?」
高見沢は知りたかった事をズバリ聞いてみた。
これに対し、小夜子花は戸惑いもなく、あっさり返して来るのだ。
「はい、皆様を存じておりました、
朝霧様は宅の上司ですし、もちろん椿子様は上司の奥様ですから、
また可奈子様は、
最近宅の桜木が随分とお近付きさせて頂いていたようでしたし … 」
高見沢は、「桜木が最近随分とお近付き」と言う所に意味深いものを感じながらも、その感情を押さえ、次の質問を投げ掛ける。
「ところで、桜木様は朝霧様に何か恨まれていた事でもございましたか?」
「朝霧様から恨まれていたかどうかなんて、私よくわかりません … が、ただ」
小夜子花は何かを言いたげたが、続く言葉を呑み込んだ。
そして、悲しそうな表情で、じっと下を見て暫らく考え込んでいるようだ。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊