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いまどき(現時)物語

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高見沢と浮舟は仏壇のある奥の部屋へと通された。
確かに、この家で葬儀が営まれたのだろう、まだ充分に片付いていない。

高見沢はシーンと静まり返った部屋を眺めてみる。
棚には一枚の写真が無造作に飾ってある。

若い時の桜木夫婦のスナップ、多分結婚して直ぐの頃の事なのだろう、二人とも新婚の幸せを噛み締めるように微笑んでいる。
この輝いていた頃に、今この時の不幸な出来事を想像出来ただろうか。

高見沢と浮舟は線香を上げ、小夜子花から出されたお茶を挟み、小夜子花と向き合った。
小夜子花は伏し目がちで口を開かず、重い沈黙が暫く続く。

高見沢は、そんな堅苦しい時の間合いをはかりながら切り出す。
「奥様、御心痛をお察し申し上げます、しかし、どうかお力落しのないように」

「はい、お気遣いありがとうございます、桜木は逝ってしまいましたが、私、しっかりやって行きます」
小夜子花が儀礼的ではあるが、芯の強さを感じさせる返事をして来る。

だが高見沢は、少しでも小夜子花から真実の言葉を引き出したい。 
そのためおもむろに事件へと話題を振って行く。

「こんな事になって、警察の方からも、いろいろと問い合わせがあったでしょう、何か困られた事があったら、私かこの浮舟の方へ、何なりとお申し付け下さい」

そんな言葉を聞いた小夜子花、顔の表情が僅かに緩む。
「私、今回の事、本当にびっくりしました、宅の桜木が最初で、その後、関係者三人が連続に不幸に合って亡くなられて行くなんて、信じられない事ですわ」


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊