【第八回・弐】お祭り神社
歩くたびにシャンシャンと鈴が鳴りわさわさと飾りが揺れる
「ねぇちゃん寒くねぇのか?」
「何食ってそんな乳できんだ?」
御輿担当のおっさん達に質問攻めされつつヨシコが御輿の後をついて歩く
「…案の定セクハラってるねぇ;ヨシコちゃん…まぁ酔っ払いの言うことだし軽く受け…」
ドゴッ
苦笑いで南が言ったその矢先背後から聞こえた破壊音に全員が振り返る
「…しつこいわ…」
コンクリートの歩道に開いた穴と青い顔のおっさん達
「そんな格好してっからだろが;」
京助が溜息をついてヨシコに歩み寄った
「そんな格好ってなによ!」
ヨシコが開けた穴から足を抜いて言った
「確かに…男心を萌え萌えさせる格好だよねぇ…ヨシコちゃんの」
南がヨシコの全身を見て言うとほんのり顔を赤らめる
「目のやり場に困るというか;」
そしてハハッと笑ってごまかした
「小学生には刺激強いかもな」
坂田が御輿を持って歩く小学生集団をチラッと見て言う
「アノくらいの歳じゃ刺激なんてわかんねぇって;」
中島が言うとヨシコが中島を睨んだ
「ソレって私に魅力がないって事?」
ヨシコが中島を睨みながら言う
「は?;」
ソレに対し中島が素っ頓狂な声を出した
「それってすっごく失礼なことよ!! そうよ! 失礼だわ! 本当アナタって何処までムカつくのよ!!」
ヨシコが怒鳴る
「誰もんなこと一言も言ってねぇじゃん;」
中島が溜息をついて言った
「オーィ! ウチワ係ー!! 掛け声!!」
ある家の前で止まった御輿の方から一人のオッサンが京助達に向かって声をかけた
「ウィ~ッス」
巨大なウチワを持った京助が駆けて行く
「…コレでも着てろ」
中島が自分の半纏をヨシコに投げて京助の後に続いた
「なっ…;」
投げられた半纏を顔で受け止めたヨシコが半纏を掴む
「嫌かもしれないけど我慢してね~;」
南がヨシコに向かって両手を合わせ【ゴメン】の仕草をした後御輿の方に駆けていった
「せーの!!」
京助の声が響くとソレに続いて小学生の元気のいい声に合わせて御輿が揺すられ上げられる
ほんの一分もかからない御輿の舞が終わると家の人が鞄を持ったオッサンに封筒を手渡し御輿の小学生軍団が再び歩き始める
「ヨシコちゃんーん! おいていくよー?」
半纏を掴んだまま後ろの方で固まっていたヨシコに南が呼びかける
「方向音痴なんだからしっかりついてこーぃ!!」
坂田も同じく声をかけた
「ヨシコおねぇさーん! 早く~!!」
慧喜に手を引かれた悠助も手を振りながら呼ぶと他の小学生も手を振ってヨシコを呼ぶ
「あ…まって!」
半纏を手に持ったままヨシコが駆け出す
「おねぇさんヨシコっていうの?」
「何歳?」
「おっぱい大きいね~」
小学生の集団に囲まれたヨシコが両手を小学生とつないで歩く
「ヨシコじゃないわ吉祥っていうの」
小学生と手をつなぎながらヨシコが答える
「じゃぁ何で京助たちヨシコっていってるの?」
四年生くらいの女子児童が後ろからついてきている中学生男子軍団の中にいるウチワを持った京助を見て言う
「私は嫌なんだけどね」
ヨシコがその女子児童に苦笑いで答える
「…結構優しいところあんじゃん」
中島がそんなヨシコの後姿を見て言った
「ヨシコちゃんって同性に好かれるタイプだね~姉御肌っていうか…」
南が言う
作品名:【第八回・弐】お祭り神社 作家名:島原あゆむ