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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第八回・弐】お祭り神社

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「…おかしいとか思ってるんだろ」
渉達と別れた後人込みの中を歩きつつ中島が呟いた
「何がよ」
ヨシコが聞き返す
「初恋相手…ミカ姉だって笑いこらえてたんだろ」
中島の言葉にヨシコが足を止めた
「どうして?」
ヨシコが首を傾げる
「別にいいんじゃない? そうよ、別におかしくなんかないじゃない」
ヨシコが言った
「恋は恋だもの。そうでしょ? 好きになったから恋でソレが初めてだったから初恋なんでしょ? ゆーちゃんが初めて恋した相手は蜜柑、いいじゃない?」
言い終わるとまたヨシコが歩き出した
「私が初めて恋した相手はりゅー様で…ずっと見てきたの」
中島がヨシコの後ろをゆっくり歩き始めた
「私は今でもりゅー様に恋してるもの…ソレはおかしい?」
突然振り返ってヨシコが中島に聞いた
「京助の…親父さんだよな?」
中島が言うとヨシコが笑顔で頷いた
「片思いだって恋は恋でしょ? だったら私はずっと恋してるわ…もう凄く長い恋」
ヨシコの笑顔が一瞬悲しく曇る
「終わらなくてもいいの…私の恋は終わらないわ」
そう言ってヨシコが顔を上げ中島を見た
「こう見えて結構一筋なの。そう…私の恋はりゅー様への恋…もうずっと変わらないわ」
「…格好いいな」
ヨシコの言葉に中島が呟いた
「気付くの遅いわ」
ヨシコが腰に手を当てて言う
「恋すれば強くなるわ。ゆーちゃんも誰もかも」
ヨシコが笑顔で言った
「ゆーちゃんが蜜柑を好きになった時ゆーちゃんは強くなったと思うの。蜜柑を守りたいと思わなかった? 何かしてあげたいと思わなかった?」
自分の胸に手を置いたヨシコが中島を見上げた
「……」
見上げてきたヨシコを中島が黙って見た後顔をいきなり背けた
「…思った…」
顔を背けたまま中島が小さく答えた
「だから私はコッチにきたいの…一秒でも長くコッチにいたいわ…だってりゅー様が一番したかったこと…私だってしたいもの」
中島がヨシコをチラッと見た
「一番したかったこと…って…」
中島が聞く
「京助と悠助…そしてハルミママさんを守るわ…幸せにしたい…りゅー様にずっと恋してずっと見てきたからわかるの…それがりゅー様の一番したかったこと…そう…それが私のしたいこと」
ヨシコが足を止めた
「ソレが私のりゅー様への恋なんだもの」
数歩ヨシコより先に進んで足を止めた中島が振り返るとヨシコの右手が上がり目をこすった
「…っ…なんでゆーちゃんに話してるのかしら…おかしいわ…止まらないじゃない………だって…私…私だって…」
いきなり泣き始めたヨシコに中島は驚き人々の視線が集まった
「痴話喧嘩かしら」
「若いのに…」
「修羅場?」
ザワザワボソボソと人々の勝手な想像から生まれた言葉が聞こえ始める
「だぁッ!!!;」
耐えられなくなった中島がヨシコの手を引っ張って小走りで駆け出した
「逃げた~…」
後ろから聞こえた誰かの声を耳にくっつけながら中島が足早にその場を離れた

「いきなり泣くな; ビビるから;」
出店の最後にある綿飴屋の裏中島が足を止めてヨシコを振り返った
「泣きたくて泣いたんじゃないわ!! だって…勝手に…」
怒鳴ったヨシコの目からポロポロと涙が頬を伝う
「泣くなってのッ;」
中島がなすすべもなくただオロオロとしている
「もぉ…やだぁ…っ…」
本泣きが入ったヨシコがしゃがんだ
「…俺ももぅやだぁ;」
中島が呟いた