ユング ~詩のようなもの
ユングの連想検査刺激語より
金持ちだけを集めた
ツアーがやってきた
でも
旅行者たちに見せるのは
木の一本も無い山と
青いランプに照らされた水槽
針が刺さったまま泳ぐ魚は
怒りの視線で
見せかけの同情を突き刺す
死ぬか
祈るか
パンを盗むか
罪を犯すしかない
新しい国
塩をまくのが
癖になってしまったと
黄色いインクで記す
頭の中は緑緑緑
欲しいのは緑
水をくださいと歌うのは
行列を作った半死人たち
長い長い航海に向かう船には
銭を支払う窓がある
親切な受付嬢が
机の向こうで尋ねる
村にはもう誰もいないのですか
冷たい雨は降り止まず
茎ばかりが伸びた草が
踊っている
海の向こうには
病気など無いという
誇りに満ちた人々が
飯を炊くという
作品名:ユング ~詩のようなもの 作家名:伊達梁川