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掌の中の宇宙 1

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Episode.4 学校の裏庭



ネネムは学校の裏庭に立っていた。
辺りは薄暗く少し寒かった。
校舎は意外に遠く・・・しかしネネムのクラスは明かりが灯っていた。
(桜先生・・・)ネネムは手に持っている花を眺めた。
また花びらが散る。あと4枚・・・。
花びらは地に落ちる寸前に光に包まれて・・・
黒ずくめの男がボンヤリと写しだされる。
「ネネム君、・・・どうしました?もう裏庭にいるのでしょう?
二兎を追うもの・・・ですよ、
この世界は独自の時間軸で動いているのですからね。
早くウサギを見つけてください。もう時間があまりありませんよ。
本当ならもうゲームオーバーなのですから。
私たちが無理やり時間をセキトメテイルだけなのですからね、
それも時間の問題ですよ。
余りにも時間を止めていると元の空間と時間に戻れなくなってしまいます。
私のこの姿は幻ですよ、
私もそちらに行こうと思ったのですが・・・
時間の矢がこの空間に流れ込んできています。凄い勢いですよ。
まるで魚の群れ・・・
時間が意思を持ってこの空間を駆逐しようとしているみたいです。
ネネム君・・・ヒントではないのですが・・・
恐らく「最後のうさぎ」は既に誰かの手の中にあると思われます。
そちらの世界を覗いたのですが、
ネネム君のほかに莫大な光量を放っている存在があります。
・・・「月読みのフィーゴ」君は今、教室にいるみたいですね。
そして後2人・・・。
しかしこれは心配する事は無いみたいですよ。
ネネム君・・・この世界は偽りの世界です。
決してこの世界に安住を求めてはいけませんよ、
どんな事も結局は幻に近いモノばかりで・・・
君は唯、裏になっているコインを表にひっくり返す、
唯それだけをしようとしているだけなのですからネネム君・・・」
やがてミッキーの姿はうっすらとしてきて・・・
そして辺りはまた薄暗い草木だけの裏山に戻った。
手に持った花が柔らかい光を放っている。かすかな鼓動の様な動き・・・
花が泣いているような気がして・・・。ネネムは少し悲しい気分になった。
ネネムは、光を放つ花をたいまつのように掲げて裏山に入っていく。
(フィーゴは・・・桜先生と菊田先生は大丈夫かしら)胸が痛む。
(マヤは何処にいるのだろう?恐らく彼も疲れてしまっているのだろう。
給食・・・食べておけばよかったかな?
僕ももう少し意地になっていたからな・・・。
家のお婆ちゃんのエビフライ・・・。
だけど他の人の前で食べるなんて・・・
猫達は大丈夫かしら?玄関はどうなっているのだろう?
元にもどっているのだろうか?)
ネネムの歩みは遅々としながらもうさぎに近づいていく、
むしろその場所に来て欲しいのだ、
出逢うことがこの世界の必然なのだから。
裏山の険しい場所を抜けると広い見晴らしの良い場所にでる。
ソコにはうさぎが好きなひよこ草がたくさん生えている。
ネネムは魔界の花をズボンのポケットに直して、
自由になった両腕でひよこ草を抜き始めた。
(うさぎ・・・食べるかな?僕の手の中に帰ってくるだろうか?)
ネネムがひよこ草を手に取り山の更に奥に進んでいく。
不思議と恐怖感は無かった。
山の奥に入れば入るほどネネムは気持ちが安らいでいくようだった。
闇と静寂とほのかな光は、ネネムのゆりかごのようだった。
ネネムは静かな世界が好きだった。ネネムの中で誰かが歌っているのだ。
凄く小さな声で。ネネムはその歌をずっと聴いて育ったのだ。
闇と柔らかい光が溶けると不思議な絵が写し出される。
ネネムは最初から持っていたのだ。
マヤもルナもその物語を、
見たり聴いたりしたかったのだ。その物語は今も続いている。
マヤとルナが同時に居るとすれば・・・ネネムはぐっすりと眠ってしまう。
ネネムが眠ると、二人は時々ダンスをする。
光と闇が互いに揺らめいて・・・ネネムの廻りでゆっくりと静かに踊る
ネネムが起きないように・・・
世界が何回も揺らめいて・・・ネネムは別の夢をみている。
ネネムの視界の先に何かが見える。
ポケットから花を取り出して掲げてみる、
・・・それはうさぎと・・・うさぎを抱いた女の子だった

作品名:掌の中の宇宙 1 作家名:透明な魚