掌の中の宇宙 1
僕の家は山の上の方にあって、
学校からは10分ぐらいなんだけど、凄い坂道なので、
其処に住んでいる住人くらいしか僕の家の周りには近づかなかった。
そうね、それと道が凄く狭くて。普通車はまず通らない・・・・嘘だけど。
「通るけど、通そうと思わない」と言った方が正確だな、そんな風な道。
僕はいつもの通りの足どりでとぼとぼ歩いていると?道に変化がある。
誰か「よそ者」が来たみたいだ、
道路に飛び出している細い竹が何本か折れている。
僕の家に着くまでに、2回ほど道に鋭いカーブが有る。
2つ目のカーブもその「誰か」の車は通過しているようだった。
そこを過ぎると、後は僕の家しか無い。
僕の家の前で車道は終わり、
後はけもの道が山のさらに上へと続いているだけだ。
僕が自宅が見える程に近づくと、
いつもの通り猫たちが出迎えてくれる。
僕の家には猫が10匹ほど居て・・・
うん、何匹かは正確には猫では無いかも知れないけれど・・・。
出迎えたくれた猫は2匹いた。
「あれ?フィーゴが居ないね?どうしたのかな?」
僕は駆けてきた2匹の猫を、
かわるがわる抱いて撫でてやりながらそう呟いた。
フィーゴは僕の家の猫の中でも特別な存在で、
猫達のリーダーであり、そして僕の親友でもあった。
つるりとしたスマートな雌猫で、黒猫で、そして流れ猫でもあった。
フィーゴは、僕が帰って来ると必ず出迎えてくれるのに、
今日は姿が見えなかった。
彼女はいつも彼女なりの考えで、
僕の事を第一に考えて行動してくれている様で・・・
だから彼女が居ない日は、大抵何か事件がある日だった。
(給食の事がばれてしまっているのではないだろうか?)
僕は何となくそう思った。
僕は暫し躊躇したが・・・
(仕方が無い、菊田先生とも確認をしたし・・・うん、いざとなれば・・・・)
なんて思いながら家に近づいて行った。
猫達は僕の後ろをひたひたとついて来る。
遠くの方で犬が鳴いた。日は暮れかかっている、
今の所は、静かないつもどおり?の或る一日。