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掌の中の宇宙 1

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Episode.1 学校




その日は学校で随分とお話を聞かされていて・・・
給食を1週間食べないとこんな目にあうんだなーって
僕は思いながら家路を急いでいた。
なんといっても給食の時間から6時まで、
ずっと食べれないオカズと睨めっこで、流石に泣いてしまいました。
最後の方は、もう悲しい理由もよく解らなかったのだけど。
先生は死んだ魚の様な目で僕を見ていた。
「ネネム君、もう・・・わかったわ、
先生もつい意地になってしまって・・・ごめんなさいね、
でもね、1週間も連続で給食を食べないなんて、
こんな事・・・ううん、ごめんなさい、先生も悪かったねゴメンネ」
先生も少し泣いていた。
可哀想に、今日は先生も用事があったようで綺麗なスカートをはいている。
教室のドアがガラガラと開いて、先生は誰かに呼ばれて出て行った。
戻ってきたときは、涙をポロポロ流して泣いていた。
そして菊田先生が、僕の方にやってきて言った。
「ネネム君、本当にごめんなさいね、
桜先生も十分に反省しているようなのでね、わかるでしょ?」
菊田先生は口元を少し曲げて優しく喋った。
「はい、菊田先生、僕こそスイマセンでした、
でもどうしても食べれなくて・・・うん、ジャ・・」
僕が、少し嗚咽を鳴らしながら弁解しようとすると、菊田先生は
汚いものを見るような、何かが壊れて驚いたような・・・
そんな顔をして僕の話を遮った。
「うん、そうね、そうね、ネネム君も苦しいよね、うん、もういいのよ、
うん、とりあえず鼻をかみましょうか?
はい・・・うん、綺麗になったわ、
何時まで泣いているのかなーそんな弱虫では無いよねネネム君は、ね、ね、」
・・・まあとにかく菊田先生は僕のお婆ちゃんを恐れているのだ。
菊田先生が意を決した様子で僕に話しかけてきた。
「だから、ね!こうしない?ネネム君、
今日はね、ネネム君がウサギの飼育係の番で、
ウサギ小屋をお友達とお掃除していたら・・・
『お友達』が誤って
ウサギを逃がしてしまった。うん、
そして何羽か捕まえたのだけど、一羽だけが裏の山に
逃げ込んで・・・ネネム君はお友達が逃がしたにも関わらず
遅くなるまで一緒に探してあげていた・・・どうかな?」
菊田先生の手がしっかりと僕の両手を握った。
「ネネム君は偉い子だもんね、
お婆ちゃんにも心配はそうそうかけれないでしょ?
うん、この間給食たべます!!ってお婆ちゃんにも言ったもんね!そうよね!」
菊田先生は僕の目を覗き込んで・・・
僕が「うん」と言わなければ多分次は体ごと抱きつかれていただろう。
「はい、菊田先生、僕こそすいませんでした、うん、でも・・・うっ」
「うん、いいのよネネム君、そうね、そうね、
もうお家に帰りたいよね、うん、ではね、
もうお家の方にはそういう事で電話してありますからね、うん、『ウサギ』ね、
いいでしょ?お婆ちゃん、喜んでいましたよ、うん、良い子だってね、
今日はエビフライらしいわよ、
どう?ネネム君?お腹すいたよね?パンとミルクしか
食べてないでしょ?うん、ね、こんな涙ばかり・・・
おばあちゃんが心配するから・・・ね?」
僕が十分に泣き止んでから、菊田先生は僕にアイスクリームをくれた。
桜先生も泣き止んで菊田先生と3人でアイスクリームを食べた。
「ネネム君は本当に算数が出来るわ!表彰されるかもしれないね!」
菊田先生は時計をチラッチラッと何回も見ながら僕に話し掛けていた。
「何この車!全然エンジンがかからないじゃないの」そんな感じ。
「うん、先生アイスご馳走様でした、もう帰ってもいいですか?」
菊田先生は口を歪めて「うん、ネネム君『ウサギ係』お疲れ様でした
。あっ逃がした子は幸ちゃんだからね。
お婆ちゃんにそういってね、いいですか?」
「はい、先生、幸太郎君ですねわかりました、それと桜先生・・・」
「うん、ネネム君・・・うん、その話・・・ごめんね・・・」
桜先生は煮え切らないようだ。
「桜先生!!」なんだか菊田先生がとても怖くなった気がした。
「では、帰りますさようなら!桜先生、
菊田先生さようなら!もう暗いので帰りまあす。」
菊田先生が手の震えを必死に抑えているのがわかった。
桜先生の「あっ・・ネネム君」と言う声を遠くに聞きながら僕は教室を後にした。
作品名:掌の中の宇宙 1 作家名:透明な魚