日出づる国 続編
祝言
陽は毎日馬で山に登って遠くに目をやり、夢兎の帰りを待ちわびていた。
やがて彼らの姿を認めると山を駆け下り、
「帰ってきた!」
と叫ぶや、狩りで獲ったキツネの皮をなめし始めた。
男たちが帰ってきて村中が色めきたっても、全身を耳にしながら知らぬふりをしている。
背後に気配を感じ、背中をこわばらせた。
「陽、帰ってきた。これから祝言を挙げるぞ、支度せい!」
意味が分からない陽は体ごと振り向き、ポカーンと口を開けたまま。
「なにか言わんか」
「おかえり・・・無事で嬉しい」
手を合わせて喜ぶ陽を夢兎は抱きしめて、もう一度ささやくように言った。
「お主と吾との祝言じゃ」
陽は、頭から湯気を出していた。