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日出づる国 続編

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蝦夷連合軍と大和連合軍との戦い


 阿仁部族は、敵の背後をかく乱する役割を得た。

 夏草が生い茂る胆沢の丘陵地に、多賀柵から撃ち出でてきた上毛野君田道を将軍とする3千の兵士は、鋒矢の陣を敷いた。
 太陽は東の空にある。

 将軍他数人の指揮官は馬上にあった。
 太陽が中天に来た時、采配が降ろされた。

 先駆けの兵士たちは声を張り上げながら、前方の部落を目指して刀を振り上げ駆けていった。
 蝦夷たちは、山の麓の木々の間から、矢を射かける。狩猟民である蝦夷たちにとって、ウサギやキツネを射るのと同じだった。
 
 馬上の指揮官は後方から鼓舞した。己目がけて飛んでくる矢を刀でなぎ払いつつ前進する。
 上毛野君田道の周囲は、数人の歩兵と数騎の騎馬により、守られていた。
 届く知らせは悪い。鶴翼の陣で左右から包み込むようにと伝令を走らせた。


 敵陣の後背に達した阿仁部族は、イチをリーダーとする5匹の犬を馬めがけて突進させた。
 突然の犬の吠え声に驚いた馬は後ろ脚立ちとなり、犬から逃れようとした。歩兵たちは馬を鎮めるために手綱を取って抑えようとするが、犬は執拗に彼らにも跳びかかる。馬上の武将たちは必死になって首にしがみつくが、ますます馬は興奮して、次々と武将たちは振り落とされた。
 
 飾り立てられた将軍の馬は目に付く。将軍の馬さばきは見事である。やがて馬を落ち着かせると周囲に目をやり、犬に向かって駆けさせた。
 
 夢兎は矢を射た。
 矢は馬の臀部に当たり、馬は勢い余ってつんのめるように横倒しとなり、田道は勢いよく投げ出された。
 馬はすぐに立ち上がり、そのまま駆け去った。
 
 夢兎が刀を下げて駆け寄るとすぐさま田道は膝立ちとなり、刀を抜いた。
 夢兎は振りかぶって撃ちおろす。
 カキーン
 右肩を下げて、刀を押し下げていく。
 夢兎が優勢にあったその時、将軍親衛隊のひとりが駆けつけ夢兎の背後から刀を突き刺そうとした。

 イチがその腕に跳び付き、牙を立てた。
 兵士の手首から血が滴り落ちるが、犬の腹を思いきり蹴とばし、離れた瞬間犬を突いた。
 キャィ〜ン
 イチは兵士に跳びかかって喉を咬んだ、と同時に兵士と共に倒れた。

 夢兎は思い切り刀を押し下げたかと思うと後ろに跳びすさり、膝をついて刀を左から右へヒュッと鳴らし、田道の胴を切った。
 ウッ、田道は腰を折る。
 夢兎はためらいなく、首をはねた。

 指揮官を失った将兵たちは、我先にと多賀柵を目指して逃げ惑った。
 その数は、十分の一にも満たない。
 太陽はまだ高い位置でぎらついていた。
作品名:日出づる国 続編 作家名:健忘真実