日出づる国 続編
日出づる国続編 (戦記・異時代ファンタジー)
ピーヒュロロ〜〜ピーヒャラヒャラララ〜〜ピーヒャラララ〜〜〜
ドンドンドコドコドンドンドドドンドンドンドコドコドンドンドン
秋の豊穣を感謝する祭りの日である。
豊御食炊屋姫尊(とよみけかしきやひめのみこと・推古天皇)が住まわる小墾田(おはりだ)の宮を中心とした近隣の神社は、どこも賑わっていた。
笛の音や太鼓・鉦の音が、気分をさらに高揚させている。
宮から丑寅(北東)へ一里行った所にある海拓榴市(つばいち)に、最大の市が立つ。
大道芸が演じられ、地方の物産が並び、若い娘たちは飾りを探すのに余念がない。
淡い柿色の上衣に、膝までの長さの縦縞の裳を纏った村の長の娘小糸は、市で遊んだ後、婢女(はしため)を伴って竹之内集落に戻るところだった。
市から子(北)の方向二里以上ある。
ふっと気付くと、すぐ後ろを赤茶色の犬が付いて来ている。
婢女は、シッシッ、と追い払うのだが、犬はハッハッとお構いなしである。
時々後ろを振り向いて、襲われる心配はないと分かると、
「かわいらしい犬や、かまへん」
付いて来るがままに、家に帰りついた。
村長(むらおさ)の住む家は高床式で、西側には、4つの奴婢のための竪穴式の住まいと牛馬の小屋があり、土地の周りには柵を巡らせている。
犬は、いつのまにかいなくなっていた。
その夜、小糸の部屋の板壁が、トントンと叩かれた。
今宵はだれとも約束はしていないはずやが、だれやろう
と思いつつ扉を少しずらして外を見た。
昼間の犬が坐っている。そして横にはひとりの若者がひざまずいて頭を下げていた。
「だれ?」
「突然のことで申し訳ありませぬ。お尋ねしたきことがございまする。出羽から参りました夢兎(むう)と申す」
「出羽! 蝦夷か」
「主は香脂を付けてられるな、それは主が作られたか? あるいは主のかか様が・・・」
「かか者が下された物やけど、かか者が作ったものやないやろ。誰ぞから買いなすったんや」
「どなたから買われた物か、分かりませぬか」
「うーん、しばし待ちや、かかを呼んで来るよって」
若者は地にひざまずいた姿勢のままで待った。
「そちが知りたいのはこの香脂を売ったお人のことやな。なんや曽爾村の倶留尊山の麓にいてるゆうてはりましたなぁ」
郎女(いらつめ)がそばに侍る婢女に、香脂の入った合わせ貝を広げて渡すと、婢女は地に下りてきて若者に手渡した。
若者は恭しく受け取り、指に少し取り匂いを嗅ぎ、犬にも嗅がせた。犬は尾を振っている。
合わせ貝を返した。
「ありがとうございます。そのお方の名は分かりませぬか」
「さあなぁ、名は分からんなぁ」