真夏の逃避行
「乗ってた車の車種も云ってました?」
「黒いジープだったっけ?」
もう一人の男は釣りの準備を始めていて、生返事をしただけだった。
「ありがとうございました。大きなヤマメを釣ってください」
「はい。ありがとうございます」
男は自分たちの車に戻った。
はるかを起こすために、早川も車に向かって歩いた。
早川からの報告を聞くと、はるかは車の外に出た。はるかが急に泣きだした。それにつられて早川も再び泣いた。
ふたりは抱き合った。
あのマンションの部屋の整理をしているとき、犯人たちはどこかで早川を監視していたに違いない。そう思うと恐ろしい。
だが、詳しい事情は解からないにしても、とにかく終わったのだと思うと、嬉しかった。
早川はまた、はるかに口づけをした。