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真夏の逃避行

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旅の終わり



 空が幾らか明るくなってきたところだった。タイヤが小石を踏みしだきながら、騒々しく河原に入って来たのは、大きな黒いワンボックスだった。4WDという文字が目立っていた。
 早川はうるさいラジオの音に起こされた。その車の中から、ニュースを男の声が伝えていた。それを聞いたことによって、早川はマンションのオーナーの家族が全員生存していたことを知った。
 早川は嬉しかった。まぶたから涙が溢れ出した。
 強盗傷害の犯人グループは夜半過ぎに逮捕されていた。三人の男たちは五千万円を所持していたが、それに関しては口を閉ざしているという。
「こんなところにソファーを持ち込んで、なかなかやりますね。そろそろ釣りのお時間ですよ」
 二人の釣り人は、気さくな感じの中年の男たちだった。困惑気に、涙顔の早川に話し掛けた男は、眼鏡をかけ、太っていた。
「今のニュースで、犯人が逮捕された場所は云ってましたか?」
「驚きましたね。はい。云ってました。それがね、近いんですよ。ここから一時間くらい行ったところの、国道沿いのドライブインで捕まったみたいです」
作品名:真夏の逃避行 作家名:マナーモード