真夏の逃避行
「残念でした。明日は魚料理ですよ。釣り竿もあるからね」
「そうか。いいね。アユの塩焼きとか?」
「ヤマメとか、イワナじゃないのかな。焚火をして、串刺しの魚を、火に近づけ過ぎないようにして焼くんだ」
「おいしいでしょうね。わたしも釣り、やってみようかな。でも、餌を買いに行かないといけないわね」
「ミノーもあるからね。そんなものは必要ないんです」
早川は語尾を上げ、得意そうに云った。
「何それ。ちょっと説明して」
「ルアーのことよ。疑似餌さ。明日が愉しみだ」
「でも、釣れなかったら摂関するよ」
「虐待はいけませんよ。グレてもいいの?」
「……あーあ。眠くなったわ。このまま眠ってもいい?」
「ここは私のベッドなんです。お姫様はお車の中でおやすみください」
「そうかあ。じゃあ、後ろに毛布を敷いて眠るね。おやすみなさい」
「おやすみなさい」