真夏の逃避行
「朝かと思ったら、まだ暗いね」
「ただ今のお時間は午後十一時でございます」
「と、いうことは、三時間近くもご奮闘頂いた、というわけですね。ご苦労さま」
テーブルの上にはスープ、サラダ、ロールパン、そしてメインディッシュがそれぞれ二人分並べられ、ワイングラスもふたつ、キャンドルの明かりを受けて輝いていた。
「あなたがワイン係りよ。早く取ってきて、コルクを抜いてくださいませ」
*
一時は雲が月を隠すこともあったが、食事が済む頃には、ほぼ快晴といった空模様になっていた。二人はソファーで肩を並べ、夜空を眺めながらワインをのんでいる。
「今夜のビーフシチュウは七つ星だったよ。ありがとう。一生忘れないよ」
「あんまり誉められ過ぎると、返って逆効果よ。二人でお食事ができたから、だからおいしかったのよ」
「そうだね。本当に、幸せな晩餐だったな」
「明日からはカップ麺よ」