真夏の逃避行
車を発進させた。ヘッドライトの光が重い車の轍を浮かび上がらせた。犯人との遭遇を避けられたことを、早川は感謝していた。
試行錯誤を続けていた。行き止まりから戻ることもあった。砂利道の林道を走っていると、不意に広い河原に出た。そこには、焚火の痕もあった。その場所でキャンプやバーベキューをする人たちがいるらしい。
「食器も洗えるきれいな川だよ。ここならおいしい料理ができそうだね」
「でき上がりは夜中になっちゃうかもだけど……学君のお腹が鳴ったね。頑張るからね」
「期待してまーす」
河原にソファーやテーブルをおろした。それが済むと鍋や食器、カセットコンロ、ガスボンベなどを車から運んだ。食器を二人で洗った。おそろしく冷たい急流だった。ワインを二本、流されないように工夫して冷やした。
はるかが調理を始めると、早川はソファーに横たわった。
*
鍋を叩く音で目覚めた。急流の音も騒々しい。
「旦那さま。ディナーのお時間が参りました」