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真夏の逃避行

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 ミニコンポやラジカセなどは、社長が買い取ってくれる。電動ミシンもそうだ。或るメーカーが製造したものならば、かなりの高額で買ってくれる。
 それ故に最もありがたい回収品ではあるが、それでも、スピーカーから流す内容にもかかわらず、重いことを理由に、無料で引き取ることはなかった。
 ときどきベトナム人や中国人の中古家電輸入業者を、社長は倉庫に呼んでテレビやミニコンポなどを、売り渡した。
 社長が借りている倉庫は、町工場が比較的多い地域に在った。冷蔵庫や洗濯機、タンスやベッドなどを、社長に引き渡すときには逆に処分費用を、車の使用料と共に、社長に対して支払うことになる。ガソリン代は各自が負担する。
早川は最近、社長に渡すよりも安く処分してくれる業者を、仲間の一人から内緒で教えてもらった。だから、昨日も社長の倉庫へ行く前に、そこへ行ってタンスや小型の冷蔵庫、洗濯機などを下ろした。今日はベッドやふとん、ソファーなどを引き取ってもらうことにしている。
 早川はその前に、夜逃げした夫婦の荷物整理と、清掃を依頼したマンションのオーナーの家へ行って、鍵を返却することにした。処分費用は昨日半分だけ受け取っているので、残りの分の集金を兼ねての訪問となる。
作品名:真夏の逃避行 作家名:マナーモード