真夏の逃避行
謎のジープ
道路わきで農家の人が野菜を売っているのが見えて来た。はるかはその前で停めて欲しいと云う。
「台所用品は何でもあるのよね」
「そうですね。常識的なものは、多分ね」
早川に確認すると、彼女は車からおりた。麦わら帽子を被った老人と笑顔で話しながら、はるかは何やら訊いてメモしていた。そして、野菜をいろいろ買って来た。
「この先三キロくらい行くと川を渡るから、橋を越えてすぐに右折してください」
「温泉?」
「おいしいお肉を安く買えるお店があるの。カップラーメンばかりじゃ良くないわよ」
「何か作ってくれるんですか?嬉しいなぁ」
「あの大きなスーパーでも買えたのに、あの時点ではそんな心境じゃなかったの」
「そういえば、趣味は料理だけど、作って食べさせてあげる人がいないって、ラジオで云ってましたね」
「それ、去年のお正月の放送でしょう。よく憶えてましたね」
「熱烈なファンですからね。そのくらいは憶えてますよ」