真夏の逃避行
「これでOKでしょう。女の勘よ」
「はるか弁財天様、どうかよろしくお導きください」
早川がそう云うと、彼女は嬉しそうだった。
豆腐屋と、コンビニ風の食料品店。寺院と墓地、墓石店も見える。検問の地点を過ぎてから国道に合流すれば、願ったり叶ったりという結果になるのだが……。
しかし、甘かった。確かに元の国道に合流することが判明したのだが、そこは検問をしているところの手前、二十メートルくらいの場所だった。早川は飛び込み台から墜ちて行くような気持ちだ。
「御家庭内で御不用となりました、黒色カラーテレビ……」
屋根のスピーカーから、大音量の女の声が流れだした。はるかが犯人だった。
「故障で音が止まらないっていうのよ。うるさいから早く行けって、云われるから……」
「なるほど。それはあるかも」
間もなく、顔をしかめた警察官たちに囲まれた。
「おい!うるさいぞ。テープを止めろ、止めろ!」
「済みません。機械が故障して止まらないんです」
「じゃあ、急いで免許証出して」