真夏の逃避行
待っていた検問
「お仕事ご苦労様です。他府県ナンバーですね。免許証をお願いします。車もちょっと確認させてもらいますからね」
いつの間にかすぐ後ろに、自転車に乗った若い警察官が居た。余りに驚いた早川は、金縛りに遭ったようになり、何もことばを返せなかった。仕方なく免許証を財布から出して見せた。
「早川学さんですね」
警察手帳に内容を転記されてしまった。そのあと警察官は無線機に向かって車のナンバーを読み上げた。早川とはるかは緊張している。
「この車の持ち主のかたのお名前を伺ってよろしいでしょうか?」
「……山岡?……山岡、翔太です。社長の名前です。車検証を見ますか?」
「あ、どうも。そうですね。ちょっと拝見しましょうか。はい……お世話様です。ええ……了解しました」
無線連絡のほうは問題がなかったらしいと思いながら、早川はグローブボックスから云った物を出してきた。警察官は早川から受け取ったものを開いて見た。
「これですね。はい。判りました」