真夏の逃避行
高速道路を二時間走ってから、一般道路に下りて来た。その後、郊外型巨大スーパーマーケットを探しながら、山を目指して国道を走っていた。暫く走って大型スーパーの、広大な駐車場に入れて車を停めた。早川はスーパーの中のATMから預金を全額引き出し、カップ麺などの当面の食料を買い込んだ。カセットコンロとやかんは使えることを確認済だった。
今日は収入がなかったものの、昨日マンションのオーナーから受け取ったものがそのまま残っていた。社長からも、ミニコンポとミシンの代金から、車の使用料を差し引いた分を昨夜受け取っていた。その前に冷蔵庫と洗濯機、そしてタンスの処分代を支払っていたが、回収のアルバイトをしてきた中では最も裕福になっていると云うことができた。
今日の収入は諦めるしかない。とんでもない事件に巻き込まれたのだから、仕方がない。
車の中で、早川は佐伯はるかが戻って来るのを待っている。彼女を待ちながら、あの三人の犠牲者の中で、一人でも助かって欲しいと、彼は切に願った。警察に対しての、救急車を呼んで欲しいという電話は、三人が襲われてから十分以内だったのではないだろうか。随分出血しているようにも見えたが、三人が即死とは限らないと思う。瞼に涙をためて、早川は神に救助を求めた。
「どうしたんですか?落ち込まないで。逃げたことは正しくないけど、あなたは何もしなかったわけではないでしょ」
いつの間にかはるかが車に戻ってきた。彼女を見ると、髪をブラッシングし、化粧を直してきたことが判った。そして、はるかも随分いろいろと買い込んできたようだ。