真夏の逃避行
ガソリンスタンドは見えない。スーパーマーケットなどの駐車場に入ってしまおうかとも思ったが、土曜日なので行列ができていた。仕方なく断念した。
交差する別の幹線道路に右折すると、パトロールカーも追随して来た。直進するべきだったのだろうか。
エアコンなしの車内は暴力的な暑さで、喉が渇いた。早川はラッパ飲み式の、魔法瓶のウーロン茶を飲んだ。
「わたしも……」
「これしかないんです」
「飲ませてください」
「病気になっても知りませんよ」
「我慢できないから……我慢して飲みます」
「……」
早川は女にそれを渡した。
「おいしい!氷が入ってる!」
早川は「間接キス」という言葉を思い出した。
緑色の案内看板が見え、高速道路の入り口が近くなった。間もなく左折して入った。パトロールカーは直進し、視界から消えた。