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てっしゅう
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「愛されたい」 第二章 秘密

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「嬉しいこと言ってくれるのね。女は何歳になっても現役なのよ。殿方次第って言う所はあるけどね。あなただってご主人が満足させられる状態なら、何年先になってもきっと愉しむでしょう?違う?」
「そうだと嬉しいですね。恥ずかしいけどきっと今とそんなに変わらずに愛し合えるのでしょうね」
「あなただから話すけど、智子さんと同じぐらいの年齢の時に主人は糖尿病で夜が全然ダメになっていたの」
「そうなんですの!糖尿病ですか」
「それでね、私が寂しそうにしていると、どこかで精力剤を買ってきて飲んで頑張ってくれたんだけど、効果が無くてね。もういいから止めてって言ったの」
「身体に良くないですものね」
「そうなの。それ以来、症状が悪化して腎不全で亡くなるまで一度も無かった。あなたよりもっと長く寂しい思いをしてきたのよ」
「知りませんでした。文子さんの我慢に比べたら私なんかまだまだ序の口なんですね。なんだか自分が恥ずかしくなりました。主人が言うように、本当は淫乱なのかも知れません」
「バカな事言うんじゃないよ!寂しさはその人によって強さが違うから、淫乱なんて思わない事よ。自分を諦めさせるような言い方で納得させるのは辞めなさいね」

自分がどれだけ惨めなのか解かってもらえると話し始めたが結果は逆になってしまった。

智子はしばらく黙ってしまった。

「どうしたの?言い方がきつかったのね、ゴメンなさい。あなたは悪くなんか無いのよ。諦めないで努力しましょうよ。ご主人しか居ないんですもの」
「はい、そうですね」

夫のことを考えるとさらに寂しく感じてしまう。自分にではなく女に感心がないから、たとえ20歳の美人にでもそういう事がしたいとは思わない人かも知れない・・・そう思えた。

「今は充実なさっているんですね、羨ましいですわ」智子はじっと文子の顔を見ながらそう言った。

「充実なんて・・・してないわよ。一人で暮らしていることに変わりはないもの」
「私に居ないと思っているの?って言われたのはウソだったんですか?」
「ウソじゃないわよ。大きな声で言えないだけ」
「どういうことなんですの?」
「あなたも鈍感なのね。もっと女の感を働かせないと鈍っちゃうわよ」
「鈍ってますか・・・普段ときめいたり思い悩んだりすることがずっと無かったから、そうなっちゃったのかしら」
「そうじゃないわよ。あなたの性格だと思うよ」
「そうですか・・・ダメな女って言うことですよね?」
「そうは言わないけど、たとえば服装とか、そぶりとか、綺麗に見せたいって言うこだわりが無いということよ」
「敏感に感じられるようにするためにはどうすればいいんですか?」
「まずはダイエットして自分を綺麗に見せることね。人から見られたり、声を掛けられたりすると気持ちが変わってくるわよ」
「でも、男の人の気を引きたいって見られることは嫌です」
「そうよ、当たり前のことよ。でもね、可愛い女でいたかったら少しは色気を出さないといけないの。あなたは若いし、スリムになればきっと素敵になるわよ」
「そうですか?スリムになれば・・・ですよね。大学時代の体型に戻れば嬉しいのですが」
「学生のときは恋人と仲良くしてたのでしょう?」
「ええ・・・思い出すと恥ずかしいです」
「可愛いのね、智子さんは。女の最大の武器は色気じゃなく、恥じらいよ。誰にでも備わっているんだけど、忘れてしまうの。今もそう感じられるあなたはきっと魅力的に男性から思われるわよ」
「色気よりですか?信じられない・・・」
「男って言うものはね、征服する願望が強いの。初めからどうぞって言う女性はなめられちゃうの。何度も何度もアタックして落とした女性のほうが魅力的に感じるものなのよ」
「知りませんでした。簡単に許しちゃダメって言うことですね?」
「覚えておいたほうがいいわよ。使う使わないは別として」

意味ありげな文子の言葉に刺激されるように、今自分はまずダイエットをして綺麗な身体作りをしようと智子は気持ちを強くした。

智子の質問に答えたくないのか、文子は違う方に話をふっていた。もう一度同じ事を尋ねた。

「今お付き合いされている男性がいらっしゃるのですよね?」
「どうしても答えて欲しいのよね、智子さんは?」
「お話されたくないのでしたらもう聞きませんが、なんだかずっと気になってしまって・・・」
「主人が亡くなって三回忌を終えた頃だったかしら。気持ちが楽になっていたのね、友人に紹介されたカラオケのグループに入ったの。初めのうちはみんなで歌いに行ってたんだけど、そのうち気の合う同士で行動するようになって、私のこといつも誘ってくれていた男性と二人で出かけるようになったの」
「グループってそういうふうになりやすいですよね。私の学生のときの彼もそういう感じで仲良くなりましたから」
「そうね、年齢は関係ないね。幾つになっても同じよ。付き合い出すきっかけは気が合うって言うことからだからね」
「その方と気が合われたのですね」
「そういうことね。歳は3つ上だったけど若く見えたしお洒落な人だったし、それによく気の付く人だったの」
「素敵ですね!主人とはまったく逆ですわ」
「あなたも言うときは言うのね。でも、奥様がいらしたのよ。私より若い素敵な奥様が」
「なるほど・・・そう言う事でしたか。それで悩まれたのですね?」
「そう・・・好きになっちゃいけないって」
「解るような気がします。どうしよう!私にもそんな人が現れちゃったら・・・」
「可笑しい人!まだその気も無いのに、悩むなんて」
「そうですけど、その時のために気持ちをしっかりと持たなくてはいけないって考えたんです」
「恋はね急にやってくるの。そして自分の予測を超えて降りかかってくるの。止めることは出来ない。いけないと解っていてものめり込んじゃうものなの。すべてが終わって、失うものを感じて初めてその愚かさに気付かされるものなのよ」
「深いんですね・・・止められるものなら止めたいって思うけど、何が自分を止められなくするのですか?」
「難しいわね・・・女の性かしら」

文子の瞳に光るものが見えた。思い出したのだろうか、それとも今の心境なのだろうか、智子には計り知れない部分でもあった。

長く二人で話をして夕方に自宅へ戻った智子は文子が話してくれたいけない恋愛を考えていた。自分には夫がいる。子供は立場が違うからそんなに気にならないが、好きになった男性と付き合いをするということには、正直抵抗がまだあった。

本当は夫が優しくなって抱いてくれたら一番嬉しいのだが、そんな事話し合える相手では無いとずっと感じているから悲しい。文子のように相手に妻がいても自分の方は独身だから自己責任で自由に振舞える事が羨ましく思えた。

娘の有里がこの日の夕方に彼を連れて家に帰ってきた。前々から交際し始めた事は聞かされていた。初めて見る娘の彼は思っていたより地味な青年であった。
「お母さん、紹介するね。深谷潤一さん、大学の同じサークルの先輩なの」
「初めまして、母親の智子です。娘がお世話になっています。仲良くして下さいね」
潤一は恥ずかしそうに頭を下げて、「はい」とだけ言った。