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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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神々と悪魔の宴⑦<悪魔の祈り>

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神々と悪魔の宴⑦

<悪魔の祈り>

「おい、しっかりしろ!」
 その悪魔は傷ついた兵士達を励ましながら戦場を走り回っていた。
 いつもは上等な服を着て愚かな人間たちを冷めた目で見下す悪魔であったが、今は疲弊しきった表情で兵士の腕を肩に担ぎ、ダラダラと汗を流しながら医療班のテントに向かって歩いている。
 得意の魔法を使えばもっと簡単に連れてゆく事が出来そうに思えるし、そんなことをしなくても一足飛びに怪我を治してしまえば良さそうなものであるが……。
 しかし良く考えて頂きたい。
 彼は仮にも悪魔である。
 そう、悪魔の魔法は人を助けようなどという不謹慎な目的には全く役に立たない。
 で、あるから、悪魔は自らの体力をもって傷ついた兵士達を懸命に救出しているのである。
 普段は口先だけ、或いは指先だけで人間の心を自在に操る悪魔にとって、力仕事ほど惨めで辛い事は無い。自慢の黒いシルクのスーツも今は汗と泥にまみれて、以前の冷徹なまでに誇りに満ちた折り目や艶は見る影も無くなっている。
 よく見れば戦場のあちらこちらで、様々な姿をした悪魔達が同じようにせっせと働いていた。
 牛の頭と下半身に蝙蝠の翼を持つ悪魔は体力だけは人一倍? ありそうだ。
 片方の腕に五人づつ、一度に十人程も抱えて歩いているが、時々倒れている兵士を踏み潰しているようだし、腕に力が入りすぎているのか、抱えたヒトの束の中から断末魔の悲鳴が聞こえたりしている。
 一方、悪戯っぽい笑みを振りまくだけの小悪魔の娘はここではあまり役に立ちそうに無かった。
 傷ついた兵士たちの傍らに屈んでは励ましの言葉でもかけているのかもしれないが、声を掛けられた兵士たちは見る間にもどんどん衰弱してゆくのが分かる。
 無理も無い。もともと小悪魔とは会話をするだけでも体力を消耗させてしまうれっきとした魔物の一族なのだ。