【第八回】お祭りマンボゥ
本殿前にチラホラ見える正月中学校の生徒らしき男子群の集まりの中から誰かが駆け寄ってきた
「ラッムちゃんッ!!」
緊那羅の名前を呼びながら浜本が手を振った
「遅かったじゃん」
もう半纏を着たハルがミヨコと共に浜本の後をついてやってきた
「ミヨも浴衣着てくればよかった~可愛い~ぃ」
ミヨが慧喜の浴衣を見て溜息混じりに言った
「お前等やけに早いじゃん」
ようやく坂田の足を離した京助が浜本とハルに言う
「なんだか体が勝手にあああああ! ってカンジでさぁ…」
浜本が足踏みをしながら言った
「わかるわかる!! こう…何かキュンキュンすんだよな!」
坂田が浜本と同じく足踏みをして言う
「そうそう! 何だかムズムズってカンジもあるキュンキュン!」
南も同じく
「コレこそ祭りパワー!! キュン!!」
京助が自分の体を抱きしめて言った
「僕も~」
悠助も足踏みをして笑う
「いくつになっても祭りは楽しいもんだ」
中島が妙に年寄りくさいことを言った
「俺等まだ中学生ですよ中島さん」
そんな中島に京助が裏手で突っ込む
「お前等早く半纏持って来いよ。灯篭の下に鳴子と一緒にまとめて置いてあるから」
境内の方からやってきた半纏を来た男子生徒が京助たちにそう言って騒がしい出店の立ち並ぶ方向へ向かっていった
「そうだそうだ!; 半纏半纏!!」
南がパンッと手を叩いて言った
「鳴子鳴子!」
中島も同じく手を叩いてまとめて置いてあるという灯篭を探した
「ヨサコイメイクもあんだぞ?」
そう言って浜本が自分の顔を指差した
「優子ちゃんが境内の方でしてくれるからついでに行ってこい?」
ハルが言う
「了解~悠と慧喜はちょっとここで待ってな」
京助が悠助の頭を撫でて言う
「僕も化粧したい~…」
チラッと上目で悠助が京助を見た
「してくれるんじゃねぇ?化粧くらい…いいじゃん行ってこいよ悠」
浜本が鳴子をポケットに入れながら言う
「本当!?」
悠助が目をキラキラさせて浜本を見た
「そんなどっかの厚塗り壁造りマダムみたいなレベルの化粧じゃないんだし…まぁ頼んでみよっか」
南が言う
「わーいっ!!」
悠助が嬉しそうに万歳をする
「じゃいくか…遊ぶ時間本当になくなっちまう;」
坂田が境内の画面を見てそれから携帯を閉じて歩き出した
「…来るんだやな」
「あ?」
ふいに聞こえたコマの声に京助が振り返った
「ってか来てるんだやな…」
イヌが威嚇のポーズをし始める
「おッ!; なんだお前コマイヌコンビまで連れて来たのか~?」
浜本がしゃがんでコマを撫でようと手を伸ばした
「ワンッ!!」
「うおおお!;」
コマが大きく吼えたせいで浜本が後ろに尻餅をついた
「なしたよコマ;」
京助も驚いた顔でコマを見た
「ワンッ!! ワンッ!!」
コマだけではなくイヌまでもが威嚇ポーズで吠え出す
「どうしたの? コマもイヌも…」
悠助が不安そうな困ったような顔で慧喜の浴衣の裾を掴みながら言う
「尋常じゃない吼え方じゃない?;」
南が苦笑いで言った
「…一体なんなんだ?;」
吼え続けるコマとイヌの声を聞いた生徒達が集まりだす
「…緊那羅…」
慧喜が悠助を抱き寄せて緊那羅に呼びかけた
「…うん…凄く嫌な感じがするっちゃ」
緊那羅の顔が険しくなる
「上なんだやな!!!」
イヌが叫んだ
作品名:【第八回】お祭りマンボゥ 作家名:島原あゆむ