【第八回】お祭りマンボゥ
本殿前にぐるりできた人垣
和楽器を手に持ったお囃子担当の生徒達が境内の階段に並んでいる
「ラムちゃん口の端切れてるみたいだけど…大丈夫?」
あの出来事の事後にきた宮津が緊那羅の顔をのぞきこんだ
「あ…大丈夫だっちゃ;」
緊那羅が苦笑いを返して言った
プツンとマイクの電源が入る音がしてお約束のキィイインという音が響く
「…無理なところは私がフォローするからね」
宮津が小さく緊那羅に耳打ちした
「一体何が始まるのさ」
矜羯羅が規律よく並んでいる男子生徒群を見て言った
「ヨサコイって言ってね~」
慧喜に抱かれた悠助が矜羯羅を見上げて答える
「ヨサコイ?」
乾闥婆が悠助に聞き返す
「うん! ソーランソーランって踊るんだ~」
悠助が手だけを動かしてヨサコイの踊りをしてみせる
「楽しそうだな~」
阿修羅がカンブリを片手に笑った
「あ、はじまるんだやな!!」
イヌに戻ったゴが尻尾を振った
和笛の音色が夜宮の夜空に響いた
「ただいま~!!」
玄関の戸をあけた悠助が家の中に向かって元気よく言った
「おかえりなさい」
母ハルミが小走りで出迎える
「…あっ!!」
靴を脱いでいた京助と緊那羅、そして悠助の後ろにいた慧喜が悠助が上げた声に動きを止めた
「…忘れモンか? 買い忘れなら明日…」
京助が靴を脱ぐ動きを再開しながら言う
「慧喜!!」
悠助が慧喜を見上げると慧喜が笑顔で首をかしげた
「しゃがんで?」
悠助に言われるがまましゃがんだ慧喜を悠助が思い切り抱きしめた
「おかえりっ」
「あ……うん…ただいま…」
慧喜(えき)が幸せそうな顔で目を閉じた
作品名:【第八回】お祭りマンボゥ 作家名:島原あゆむ