朝露
ファビウスの一行は、時折立ち寄った街で商談をまとめながら、ローマに向かっていく。
アウレリウスは、ファビウスの隣で商談を記録するなどの仕事をする。
案外、この記録係という仕事は彼に合っているらしく、ファビウスや商談相手も感心しきりである。
「たいしたものだ・・・さすがマルコの息子だ・・」
「ファビウスや・・・しっかり丁寧に仕込んでおくれよ・・本当に将来が楽しみだ・・」
立ち寄った街の中には、夜の宴席で、商談相手の娘を紹介されることも多かった。
「アウレリウスや・・どうだ・・・わが娘を・・・」
「持参金も、はずむ・・」
アウレリウスは断ってはいたが、波風の立つことを嫌う性格から夜も眠れず悩むこともあった。
朝になるとファビウスが何とか話をつけてくれてあり、アウレリウスが、苦しみ続けることはなかった。
「アウレリウスよ・・・」
ファビウスが語りかける。
「お前の家の裕福さ、そしてお前の美貌・・その柔らかな性格、仕事も日々成長している・・・ローマでも人気が出るであろう・・」
アウレリウスは初めて、自分の評価や家のことをこの旅で聞き、うれしいというより不思議な思いであった。