朝露
「いない・・」
アウレリウスは、後ろを振り返るたびに彼女がいないことに落胆している。
「ルチアかい?」
母がアウレリウスに声をかける。
母はアウレリウスの心を見透かしているようだ。
「ルチアなら、ちょっとワインの蔵にいるよ・・もう少ししたら戻ってくろだろうさ・・」
母の言葉を聞いて、アウレリウスの心は少し軽くなったようだ。
「今夜は・・・いや・・・旅立つまでは、ルチアのそばにいておやり・・」
母はアウレリウスの耳にそっとささやく。
「連れて行くことは 出来ないのかい?」
アウレリウスは、母に懇願している。
「それは・・・父さんも、ファビウスも許さないし・・私も認めない・・今度の旅はそもそも、お前の修行も兼ねてのこと、
そして・・お前はこの家の大切な跡取りであるし・・ルチアは・・」
「それは・・わかってる・・でも身分の違いは 僕達には関係の無いことだ・・」
「アウレリウス・・今はこの親の言うことを聞いておくれ・・」
母も涙ぐんでいる。
ルチアは宴席に姿を見せることは無くかった。
そして アウレリウスにとって、とても長く感じる宴会は、深夜まで続いた。
結局のところ彼もワインの飲みすぎで またしても酔いつぶれてしまうのだった。