朝露
「本当のお礼って・・・」
二人の子供がヘレナに向かって走ってくる。
「ソフィー・・イーリアス・・」
ヘレナが突然大声をあげる。
「この子達の行方も突き止めた・・・ファビウスは最初はどこか裕福な家に里子に出すと言っていたが、結局はエジプトの方で、奴隷になっていたよ・・」
「ローマの政界や、経済人、そしてアテネの取引先全部を使って探し当てた・・・」
「・・・・あきらめていたのに・・」
3人の親子は、しっかりと抱き合い泣きじゃくっている。
「これからは・・経済的にも身分的にも心配はない・・ナポリからだけど、君を通じて商売もしたいからね・・・、そして元老院の議員を通じて君のローマ市民権も既に得ている。」
アウレリウスは、その優しい笑顔で語りかける。
「それから・・・へレナ・・・頼みがある。」
「はい・・アウレリウス様・・」
「私とルチアに子供が生まれ、成長したら・・・ローマの私の屋敷で、君に家庭教師を頼もうと考えている・・そして、これは、ルチアからの希望でもある」
「だから・・・君はそれまで、もっと研究をして、そして健康を保っておく必要がある。」
幸せがやっと訪れたヘレナと、それを優しい眼でみつめるアウレリウスを、アテネの夕焼けが包んでいた。