朝露
何やら、門のあたりが賑やかである。
ヘレナは、その体調の悪さからベッドに臥せっていたが、しだいに賑やかさが増しているような気がして、ベッドから身を起こした。
どうやら、かなり多くの人がこのファビウスの家に入ってきたらしい。
笑い声や歓声が聞えてくる。
「もしかして・・・」
ヘレナは、心に浮かぶ期待に胸をときめかす。
たちまち、ヘレナの顔に赤みがさしてくる。
聞きなれた足音が近づいてくる。
ヘレナはその鼓動の高まりに、思わず胸を抑えている。
ヘレナの部屋の扉が開けられた。
「ヘレナ・・・元気にしていたかい?」
アウレリウスの、明るくそして優しい顔が目の前にある。
「はい・・・おかえりなさいませ・・・アウレリウス様・・・」
ヘレナの顔は、真っ赤である。
「ファビウスに聞いたが、体調を崩していたようだね・・」
「あ・・・はい・・・申し訳ありません・・」
「ヘレナには、少し伝えることがあって、少しローマに戻ってきたのさ」
「伝えることとは・・・」
「うん・・・心配しなくていいよ・・・僕を信じて・・」
アウレリウスは、にっこりと笑う。
「この人の言うことなら、信じろと言われなくても信じるのに・・」
ヘレナは心の中でそっとつぶやいている。