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朝露

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アウレリウス自身が、ルチアの食事を作り、身の回りの世話を行う生活が、数週間続いた。

ルチアは少しずつではあるが、体調を取り戻し、目線も定まり、ルチア本来の、そのはつらつとした笑顔でアウレリウスを見つめることが出来るようになった。


アウレリウスとルチアのナポリでの幸せな生活が続く中、ヘレナはローマで物思いに沈む日が多くなっていた。

「ヘレナ・・・これは仕方が無いことなのだ・・」
「お前はアウレリウスの教育や、身の回りの世話を通じて立派に私の面目を果たしてくれた」
「私も決してお前を悪いようにはしない」

ファビウスも時々は声をかけてくれるのであるが、亡くなった夫の残した借金や、アテネに残してある両親への想い、そしてアウレリウスにはどうしても話すことが出来なかったひとつの不安が複雑にからみあって、どうしても思い悩んでしまう。

アウレリウスがこの家に居たときは、アウレリウス独特の明るさや優しさに気が紛れ、自分もアウレリウスに貢献しているという思いで、充実した生活ができ、アウレリウスに対する愛も感じるようになっていた。

しかし、アウレリウスが目の前から消えている現在は、どうすることも出来ない・・・本当に思い悩み、いっそのこと亡き夫の居る場所へ旅立とうと、ナイフを首にあてることもあった。

しかし・・・どうしても、もう一度アウレリウスのあの明るい笑顔を見たい、そしてやさしい声を聞きたい・・
アウレリウスに、どうしても聞いてもらいたいこと、頼みたいことがある・・
彼ならば、きっと・・・

ヘレナは、そのたびに湧き上ってくる熱い想いにナイフをそれ以上進めることは出来なかった。

作品名:朝露 作家名:舞夢