朝露
「ルチア・・・待たせて悪かった・・・」
アウレリウスの眼から、涙が溢れ出す。
「貴方・・・」
ルチアがアウレリウスを手招きする。
アウレリウスはベッドに入り、そっと ルチアのやせ細った身体を抱きしめる。
アウレリウスの部屋の開け放った窓から、地中海の風がやさしく吹き込んで来る。
ルチアは、やっとアウレリウスの胸で眠ることの出来る幸せを感じている。
アウレリウスがこの家を出て行って以来、自分自身の身寄りのなさもあったが、いつもその心は空虚な思いが去来するのみであった。
もちろん、アウレリウスの父や母もそんなルチアの想いを察して、優しく接してはいた。
しかし、それは彼女にとってアウレリウスのいないわびしさを紛らわすことにはならない。
それでも、ルチアは生来の仕事好きであったので、日中は何とか笑顔で周囲に接してはいた。
しかし、夜になって一人になると、寂しさはどうにもならない。
アウレリウスの父の計らいもあったが、アウレリウスのベッドにもぐりこみ、寂しさに耐え切れず、枕を涙でぬらす日々が続いたのであった。
アウレリウスは、そんなルチアの寂しさを、人間的にも成長したその胸でしっかりと受け止めている。
「ルチア・・・もう 心配はいらない・・・ずっと お前を守る。
安心していいよ ・・・」
ルチアの髪をなでながら毎晩 アウレリウスは語りかける。