朝露
アウレリウスは、いつものようにその明るい笑顔で、ファビウスやその家族、そしてヘレナとひと時の別れを告げ、アッピア街道をナポリへと進んでいく。
ヘレナが、少し暗い顔をしていることには気が付いていたが、アウレリウスの心はもはやナポリでの父や母、そして愛するルチアとの再会に占められており、振り返ることなどは考えもしなかった。
旅は天候にも恵まれ、順調に進んでいく。
宿泊するあちらこちらで、みやげを買ったりするのでナポリに着いた時には、かなりな荷物となっていた。
ナポリの街の中を進んでいくと、街の人々が次々に祝福の言葉を投げかけてくる。
アウレリウスのローマでの名声は、ここナポリにも十分に伝わっているようだ。
アウレリウスは、街の人々に、みやげ物を渡したり、挨拶をしたりしながら、やっとのことで自分の屋敷に入った。
数多くの使用人が彼を拍手をしながら待ちわびている。
見慣れた玄関には、懐かしい父と母が立っている。
アウレリウスは、ゆっくりと歩いて父と母の前に立った。
「ただいま、父さん、母さん・・・」
アウレリウスは父、そして母としっかりと抱き合い再会を喜び合った。
しばしの抱擁のあと、アウレリウスが両親に尋ねた。
「ルチアは・・・・」
父の顔が曇り、母は顔を下に向けている・・・・