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お下げ髪の少女 後半

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 話すときのやや乱暴な云いまわしに抵抗があったが、書くものはまるで想像もつかない繊細な文章および物語だった。
「感動しました。ご馳走になった上に、素晴らしいものを、ありがとうございました」
 作家は読んでいた書物から眼をあげて、にこやかに云った。
「そうかね。そう云ってくれると嬉しいよ。しかし、感動かい。ありがたいねぇ」
「人を感動させられるものを書くことが、僕の夢です。先生の弟子にして頂けませんか」
「弟子かね。まあ、今度、きみが書いたものを持ってきなさい。少しはアドバイスできるといいんだが」
「申し遅れました。僕は緒方邦彦です。よろしくお願いします」
「緒方君か。ここにある本は勝手に読んで構わないよ。おれのペンネームはとりあえず伏せておこうか。ただの暇なおやじと思ってくれればいい」
「長編小説もお書きになりますか」
「ざっくばらんに云ってくれ。長編もあるが、きみは長編を書きたいのか」
「そんなことはありません。短編が好きなんです。今のところ、短編だけ書こうと思っています」
 男は眼を輝かせた。
「基本的には俺もそうだ。長編なんて、かったるくてしょうがねえ」