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お下げ髪の少女 後半

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「ヘミングウエイもそうですが、好きな作家が、みんな短編の名手なんです」
「それはいい傾向だ。いつだってここに来て読んでもいいし、書いてもいい。冷蔵庫のものを飲み食いしてもいい。勝手にやってくれ」
 作家は合鍵らしきものを卓袱台の上に投げた。緒方はまた感動を覚えた。
「僕のような者をいきなり信用していいんですか」
「これでも人を見る目はあるんだ。余計な心配するな。明日から三日間は留守にするが、来たかったら来なさい」
「ご旅行ですか?」
「正月くらいは家に居ることにしてる。ここは独立した書斎ってえわけよ。もうちょっとましな家を持ってる。そのうち、そっちの方でもご馳走するか。うちのカミサン、結構料理がうまいんだ」
「僕は女性が苦手です。ここだけで結構です」
「そうかね。さて、うるさい女房の顔を見に行くか。ここに泊まりたかったら好きにしてくれ。押し入れに布団もある。女を連れ込んでもいいんだぞ」
 緒方は笑った。
「云ったばかりですよ。女性は苦手なんです」
 午後十時になっていた。二人とも屋外へ出た。空にオリオン座が見えた。冷え込んでいるが、風はなかった。アパートの前で別れた。