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それぞれの季節

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その、スケッチブックを手にした風変わりな女の子が僕と同じクラスだと知ったのは、2回目の英語の授業のときだった。
(あのときのキャンパス内の・・・・・女の子か。一緒とはねぇ。)
それ以降、僕は英語の授業になんとなく出る気がしなくなり、時折サボるようになった。
しかし、彼女の方も、僕が出ていようがいまいが、僕以上に頻繁に欠席しているようだった。
彼女については、クラス内の男どもの噂でも、あまり良い話は聞かなかった。
そして今日。
後期も押し詰まって来たから、ふらっと授業に出てみた。
いつもの通り、窓側の一番後ろの席だ。
すると、授業終了間際に彼女が教室に入って来て、僕の隣の席に腰を下ろしたのだ。
意外にも彼女は、僕に向かって話しかけて来た。
「わたしね、来年の春から美術大学に入ることに決めたの。」
僕は、彼女を振り向いた目の前が真っ暗になって行くのに気が付いた。
今まで、たまに教室に行くと、まず教室内を意識的にぐるりと見回したっけ。
知らず知らずのうちに誰を探していたのか、今わかったような気がした。
「でも、あのときのようにスケッチブックを持って、また銅像の下に遊びに来るわ。あなたに逢いに・・・・。」
彼女は肩をすぼめて、ちょっと淋しそうに微笑んだ。
僕は「うん」とゆっくり頷いた。
彼女に対しての初めての言葉だった。


僕は、小走りに砂利道を駆けて去って行く彼女の足音を聞きとった。
後ろを振り向くと、彼女の小さな後ろ姿が雑踏の中に紛れて行くところだった。
その足音も、すぐに回りの雑踏にかき消されて行った。

僕はふと、楽しい気分になって、心の中で呟いた。
(男は女を愛さない限り、どんな女といても幸せである・・・・・か。)
作品名:それぞれの季節 作家名:sirius2014