サイボーグさっちゃん
わかなちゃんがこまっているところへ、お母さんがかえってきました。
「あ、お母さん、たいへんなの」
わかなちゃんは、お母さんの手をつかんで、さっちゃんのところへ行こうとしました。
「な、な、何よ、どうしたの」
わかなちゃんは、お母さんの手をひいて、バスていりゅうじょへむかいました。大人に説明してもむりだと思ったからです。大人は、電池で動く人間なんていないと思っているのです。
「どうしたっていうの」と言いながらも、わかなちゃんの気持ちが通じたのか、お母さんは早足になりました。バスのていりゅうじょが見えてきました。
さっちゃんを車にのせようとしている男が見えました。
「あいつ、悪いやつ」とわかなちゃんはさけびました。
お母さんも、わかったようです。
「こらあー」
お母さんは、毎日「いらっしゃいませー」と大きな声で言っているので、遠くまでひびきます。
あやしい男が、さっちゃんをはなして、車にのるのが見えました。
さっちゃんが、道路にたおれています。
わかなちゃんとお母さんが、そばに行くと、さっちゃんは、やっとニコッとほほえんだが、すぐねむってしまいました。
「ああ、すずきさんちのさっちゃんだわ」
わかなちゃんのお母さんがそう言って、さっちゃんをせなかに 背負いました。
わかなちゃんが、「おうちわかる?」とお母さんにきくと、あ母さんは「ああ、ヤサイを配達したことがあるからわかるよ」と言って、早足になって《すずきさん》の家へむかいました。
作品名:サイボーグさっちゃん 作家名:伊達梁川