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CROSS 第14話 『挨拶まわり』

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 霖之助は、『3丁目の夕日』に登場しそうな古風の一人乗りのオ
ート三輪で来ており、少佐は荷台に座った。荷台には、『紅魔館行
き』や『チルノ食品行き』と書かれた3つの荷物がどんと乗ってい
た。

 少佐を乗せたオート三輪は森の中を進む。先ほどの分かれ道のと
ころで、3人の妖精が看板の矢印を元に戻していた。
「なんですかアレ。妖精?」
「妖精を見るのは初めてかい?」
「ええ」
「君はあの妖精の子たちに黙されたんだろうね」
「……あの「3匹」の妖精は、オレに恨みがあるんですかね?」
このオート三輪はドアが無い車なので、普通に運転席と荷台とで会
話ができる。
「いいや、誰にもやっているただのイタズラだよ。……あまり怒ら
 ないでやってくれ、山口君」
「……なんで、オレの名前を?」
「今朝の新聞見てないの?」
「帝国連邦の新聞なら読みましたが、オレのことなんて書いてなか
 ったですよ?」
「そんな御用新聞じゃなくて、この世界の新聞の『文々。新聞』の
 だよ」
「『文々。新聞』?」
「射命丸っていう天狗がやっている新聞だよ」
「……天狗……ですか?」
「」
霖之助はそう言うと、服の内ポケットからその新聞を取り出した。
新聞には、『文々。新聞』と書かれており、トップの一面にデカデ
カと少佐がこの幻想共和国に来るということが書かれていた。ただ、
歓迎するという論調ではなく、変わり者がやって来るかのような扱
いだ……。
「その新聞によると、君は自分の世界の門戸開放を進めるつもりら
 しいね?」
「……ええ、他の世界との交流は進めていかなくてはならないと思
 っています」
「じゃあ、今度視察に行くよ。うちの店の支店を758号世界にも
 出そうかと考えているんだよ」
「それはいいですね」

 オート三輪は、いくつかの分かれ道を曲がって走り続けた。やが
て森を抜けて、大きな湖の周囲にある道を走り出した。うっすらと
霧が出ていたが、ヘッドライトを点けるほどではない。
「あそこにチラッと見えるのが紅魔館だよ」
少佐は荷台で立ち上がって前方を見た。
 霧の中に大きな屋敷が見えた。大きな時計台が屋敷の真ん中にあ
る。よく見ると、屋敷は濃い赤色だった。間違いなく、あれが紅魔
館だ。
「紅魔館に行く前に、ちょっと荷物を降ろしていくところがあるか
 ら、少し寄り道するよ」
少佐は腕時計をチラリと見た後で、
「わかりました」
そう言って、荷台に座った。『チルノ食品行き』と書かれている荷
物をそこで降ろすのだろう。伝票には、牛肉としか書かれていなか
った。