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CROSS 第14話 『挨拶まわり』

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 少佐は道を間違えていることを知らずに、森の中をどんどん進ん
でいった。しばらく進んだ先の行き止まりに一軒の民家があった。
 その民家の軒先に一枚の板でできた看板があった。その看板には
『霧雨魔法店』と雑な字で書いてあった。
 少佐はそこでようやく、道を間違えていることに気づいた。
「……豪邸だって聞いたし、「これ」は紅魔館じゃないな。 道を
 尋ねていくか」
少佐はそう言うと、その民家のドアをゆっくりと開けた。

 入口の目の前にあるカウンターに、白と黒の洋服を着て、魔女帽
を被っている10代後半と見られる少女が座っていた。少女は本に
目を通しているところだった。少佐が入ってきたことに気づいてい
ないようだ。
「あのー」
少佐が声をかけると、少女はゆっくりと顔を上げて、少佐を見た。
「……何の用だよ?」
少女はめんどくさそうにそう言うと、本に視線を戻した。
「紅魔館へはどう行けばいいんでしょうか?」
「ここが交番に見えるのか? あんたが迷子の子猫ちゃんで、私が
 犬のお巡りさんっていうわけか?」
「……いいえ」
「私が作ったありがたい地図を持ってないのか?」
「もしかして、これですか?」
少佐はそう言うと、あの雑な地図を見せた。
「そうそう。その地図なら、永遠亭の竹林だって突破できるぜ」
「……そうですか」
「それじゃあ、頑張ってな」
「…………」

 これ以上、この不親切な地図を作った不親切な人に話していても
無駄だと感じた少佐は、曲がれ右してこの民家から出ようとした。

「あれ? 魔理沙。お客さんかい?」

 ドアから、メガネをかけた20代ぐらいの男が両手に荷物を持っ
て入ってきた。少佐は横にどいて道を開けた。その男は、荷物をど
んとカウンターの上に置いた。
「ああ、霖之助。客じゃなくて迷子だぜ。たぶん、いつもの妖精
 たちに黙されたんだと思うけどさ」
「なるほど」
「紅魔館に行くんだってさ。変な奴だよな」
「……後で僕も紅魔館に行くんだけどね」
すぐ近くに少佐がいるにも関わらず、魔理沙と霖之助という二人
は会話をする。少佐がドアの取っ手に手をかけたそのとき、
「……そうだ。君、いっしょに行くかい。乗せてってあげるよ」
霖之助が振り返って少佐にそう言った。少佐は、腕時計をチラリと
見た後、
「それじゃあ、お願いします」
と言った。歩いていたら、間に合いそうにないからだ。
 そこで、魔理沙は何かを思い出したらしく、
「紅魔館に行くんなら、これをパチェリーに返しておいてくれない
 か。そらよ」
魔理沙は一冊の分厚い本を少佐にぶん投げた。少佐はなんとかそれ
を受け取った。
 その本の表紙には、『異次元のすべて』というタイトルが書かれ
ていた……。
「……パチェリーさんって、誰ですか?」
「向こうで聞けばわかる」
魔理沙はそう言うと、今届いた荷物を持って、奥の部屋に行ってし
まった……。