CROSS 第14話 『挨拶まわり』
「ああ、そうだ。この本を、パチェリーという人に渡しておいても
らえますか?」
少佐はそう言って、バッグから1冊の本を取り出した。魔理沙から
渡された『異次元のすべて』という本だ。
バッ!!!
その本のタイトルを見た咲夜は、素早く少佐からその本を奪い取
った……。少佐は一瞬、何が起きたのかがわからなかった……。
「どこでこの本を!?」
咲夜は叫んだ……。両手でその本を大事そうに抱きかかえている。
「……霧雨魔法店っていうところの魔理沙という人から、パチェリー
に渡してくれと頼まれたんですが」
少佐は面倒事になってしまったと思いながらそう言った。
すると、咲夜は回れ右してガレージから出ていった。あっという
間で、口を開くころには咲夜の姿は無かった……。
「あの本はいったい何だったんだろう?」
ガレージに残された少佐は車の中で呟いた。咲夜が戻ってくるのを
待とうかと思ったが、何分たっても戻って来ないので、ほっといて
行くことにした。よほどのことなら、さっそくこの赤いコウモリの
バッジの直通電話が使用されるだろう。
少佐が運転する車は、庭の道をゆっくりと走り、門に着いた。門
は閉まっており、何の反応もないので、少佐がクラクションを鳴ら
すと、少しして門が開いた。
少佐がチラリと受付ボックスを見ると、紅美鈴が眠そうに少佐を
見ていた……。少佐の車が門を通過すると、門を閉めて、また眠り
始めた……。
門から紅魔館の敷地の外へと出た少佐は、車を急加速させ、ヘッ
ドライトをハイビームにした……。急加速の音で、紅美鈴は「う〜
ん」とうなっていた……。
作品名:CROSS 第14話 『挨拶まわり』 作家名:やまさん