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CROSS 第14話 『挨拶まわり』

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「こんないい加減な報告書を寄越すなんて、アンタも偉くなったも
 んね!!!」

 咲夜がドアをノックした瞬間、ドアの向こうから、少女の怒声が
聞こえてきた。その怒声に少佐はビクッとなった。すると、咲夜は
普通にドアを開け、少佐を部屋の中に入れた。少佐が部屋に入ると、
咲夜は部屋の外からドアを閉めた……。

 部屋は広く、豪華なつくりになっていた。家具は赤系の色で統一
され、大きな窓の向こうには星空が広がっていた。その部屋の奥に
ある大きなデスクに、一人の少女がいた。彼女がレミリア・スカー
レットだ。
「アンタの代わりなんていくらでもいるのよ?」
レミリアは電話で誰かと話していた。彼女は少佐をチラ見すると、
デスクの前を指さした。そこに立って待っていろということだろう。
少佐はすぐにそこに移動して、レミリアの電話が終わるのを待った。

「ふー。まったく、あの将軍、つけ上がってるわねぇ」
レミリアは電話を終えた後でそう呟いていた。
「……よく来たわね。これ飲む?」
レミリアは少佐を見ると、そう言って、赤い液体が入ったビンを見
せた。角度のせいでラベルが見えなかった。ただ、彼女のグラスに
は、赤い液体がたっぷりと入っていた……。
「いいえ、いらないです」
赤い液体が血だと思った少佐はそう言って、手を横に振った。レミ
リアは「あっそう」と言うと、グラスの赤い液体を一気に飲み干し
た……。
「こんなに美味しいワインなのにねぇ……」
血ではなく、ただの赤ワインだったようだ。
「ああ、CROSSと758号世界のトップ就任、おめでとう」
レミリアは世間話でもするようにスラッと言った。
「本当に御支援、ありがとうございました!!!」
少佐は深々と頭を下げた。
「特に何もしてないわよ。ちょっと、帝国連邦陸軍の上層部の連中
 に一言言ってやっただけだから」
「ありがとうございます!!!」
少佐は頭をもう一度下げた。

「失礼します」
咲夜が紅茶のポットとカップを持って入ってきた。カップが一つし
かないので、レミリアのための紅茶だろう。咲夜はレミリアのデス
クの横に立った。
「トップ就任の御祝いとして、アンタにあげるものがあるの」
「それはそれは」
レミリアはデスクの引出しから何かを取り出すと、それを少佐に向
かって放り投げた。少佐はそれをキャッチして、それを見た。
 それは、バッジであった。赤いコウモリのバッジで、少佐はさっ
そくそれを胸に付けた。
「そのバッジは、この電話との直通電話ができるの」
レミリアはデスクの上の黒電話を指さした。さっき、レミリアが使
っていた電話とは違う電話で、『直通電話専用』と書かれていた。
「悪い吸血鬼に襲われそうになったり、嫌な奴をなんとかしたいな
 ら、それを見せてやりなさい。たいていの奴は黙るから」
レミリアは自慢気にそう言った……。