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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・禄】祭男爵奇談

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昨日夜に通った道を一人歩く緊那羅の手には袋に入った京助の弁当のほかにおにぎりが二つ入っていた
『朝ごはん毎度だけど食べていかなかったんだけど…朝から踊っておなか減ってると思うから』
そういって母ハルミが即座に作ったおにぎりが袋の中でころころ転がる
「さすがハルミママさん…やっぱりわかってるんだっちゃね…京助のこと」
アルミ箔に包まれたおにぎりを見て緊那羅が微笑んだ
「…風が気持ちいいっちゃ~…」
昨日は暗くて見えなかった農道の脇に広がる田植えを終えたばかりの田んぼの中から聞こえるカエルの鳴き声
一本向こうは国道でその向こうに広がるは青から深緑へとグラデーションを作る日本海
その日本海からの風を緊那羅は思い切り吸い込んだ
見上げれば霞の雲とカモメとカラスが青い空を泳いでいる
「…私もここにいたいっちゃ」
足を止め目を伏せた緊那羅が呟いた
「できればずっと…」

プァン!!

「わッ!;」
いきなりしたクラクションの音に緊那羅が驚いて飛びのくと白い軽トラックが緊那羅の横を通り過ぎていった
「…っくりしたっちゃ~…;」
ウインカーを左に上げて国道へと通じる道へと入っていった軽トラックの後ろを見て緊那羅がドキドキと高鳴っている胸をなでおろした

「…もうココにはいないみたい…だっちゃね」
木に飛び乗ってそこから体育館の中を覗き込んだ緊那羅が呟いた
「…だとすると…教室…だっちゃ?」
緊那羅がザッと木から下りて赤レンガ造りの校舎を見上げた
今は生徒が減って使われていない教室が多いのだが正月中学校の校舎はやたらでかくそして古い
「…確か…海に面した方だったはず…」
うろ覚えの記憶を引きずり出しながら緊那羅は歩きだした
所々ひび割れたレンガの校舎に沿って歩くと緊那羅は見覚えある景色に出くわした
「ここ…は…」
懐かしい記憶とスースーした記憶が蘇り緊那羅は無意識に尻を押さえた
「…この階段…登ったら京助の教室わかるっちゃかね?」
片足を階段の一段目に乗せて躊躇いながらもう一段足を進めた緊那羅が上を見上げる

キーンコーンカーンコーン…

ザザザ…という雑音交じりのチャイムが鳴り響くと校舎のほうからガタガタという音やガララという音、そして生徒の声や足音が聞こえてきて緊那羅が後ろを振り返ると廊下には教室から出てきた生徒達が見えた
「京助…は…」
2、3段階段を上がって校舎の廊下に出ている生徒の中に緊那羅は京助を探す